日本古代 土器の基礎知識

土器をみる眼1

 考古学の研究者が土器をみるとき、それは焼き物をただ眺めているのとはちがっています。ときには、実測という作業を通じて、一つの土器にじっくりと向き合うこともあります。この時間をかけがいのないものと思う考古学研究者も少なくないとおもいます。

  実測は、1mm目の方眼紙を準備して、対象資料を正しくすえて、三角定規、先端の尖った定規(わたしが学んだ研究室ではツンツンとよんでいます)、2点間の距離を測るディバイダー、厚みを測るキャリパ(製品名ではキャリパですが、わたしのまわりではキャリパーとよく呼ばれています) などといった道具を駆使し、細く尖らせた鉛筆で遺物の特徴を図化していく作業です。

  実測する際に、大切なことは対象資料の観察です。土器であれば、その土器の最も特徴的なカタチや文様、つくり方がわかる技術痕跡が図面にあらわれるように据えるため、まず資料の特徴をつかむことからはじめます。そして、土器の表面がいたまないように注意して、土器の形状に変化がみられるところを中心にツンツンをあてて、三角定規を利用して目盛りを読み、鉛筆で方眼紙の上に計測点を落とし、筆先を外にはねて、しるしをつけます(これをケバとよんでいます)。ケバをつなげば、土器の外形を方眼紙上に正確に描くことができます。

 外形を描き終えると、その中央に中軸線を引いて、左側には外面の特徴を、右側には土器の断面と内面の特徴を描き加えて、徐々に実測図が完成していきます。ここでいう特徴とは、土器製作の痕跡や器面の調整痕、それに文様、スス・コゲや釉薬の付着範囲等です。

 できあがった実測図を見比べていくと、土器の違いがわかっていきます。この違いは、製作時期の差、製作地の差異などであり、ここから考古学の研究が深まっていきます。